退化生物はミック・ジャガーの夢を見るか?

はじめに断っておくがぼくはDEVOのメンバーにも会ったことがないし、アルバムもすべてを聴いていないし、歌詞の意味もほとんど理解していない。以下の文章もネットでちょっと調べた情報をもとにして、勝手にマーク・バザーズボウのフリをしているなりすましだ。オレオレ詐欺となんら変わらないフィクションの塗り固めだ。ただはじめてDEVOを聴いたときにぶっ飛ばされて興奮したことは嘘ではない。ソフトに死んでいるような生き方を嘲笑って、そのあまりにも美しい声で、演奏で、動き方で、衣装で、キャラクターで、パフォーマンスをする彼らに最大限のリスペクトを持っている。そのことだけはわかってほしい。

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デッデー デレデー デデデデン!「おれはぜんぜん満足しちゃいない。おれはまったく満足できやしない。やって、やって、やって、やりまくったけど、おれはぜんっぜん満足できるわけない!」

ローリングストーンズがかの超有名な曲、『サティスファクション』を初披露したのが、今からちょうど60年前の1965年。ストーンズをスターダムにのし上げた一曲とされるこの曲は、当時ビルボード誌にて、”hard-driving blues dance beat backs up a strong vocal performance.”と評された。コンサートではイントロのリフを聴いた瞬間、観客は発狂し会場は興奮の坩堝と化した。その光景をテレビに齧り付いて見ていたのが、DEVOのメンバー、つまりおれたちの世代だ。

1973年、DEVOは大学の仲間で結成した。当時読んだ『The Beginning Was The End』という本の影響で、その「人間退化論」を音楽のバックボーンにしようと考えた。「ディーヴォ(Devo)」というバンド名は「De-Evolution」の略で、「人間は進化した生き物ではなく、退化した生き物だ」という意味が込められている。反戦運動に参加したときに知り合いが目の前で射殺された。争いをやめることを主張した人間が殺されるなんて、人間はほかの動物より優っているなんてどうして言えるだろうか。アートスクールの落ちこぼれだったおれたちはまず楽器を持って、それを使ってどう表現できるか考えた。ギター、キーボード、ベース、ドラムそれを使って交信を図るとはどんなことだろう。必死になって死にものぐるいで演奏した、時には曲にもなっていない音を延々と鳴らし続け(そうするしか仕方がなかった)気がついたらステージの電源を無理やり落とされていた。1番ひどかったのは頼むからステージを降りてくれと50ドル渡されたときだ。おれたちは無茶苦茶だったけど、コンセプトとメッセージは明確だった。

ある日、いつものようにガレージで練習をしている、ちょっとひと休みしようかというときにギターのボブ2号が不思議なフレーズを弾きはじめた。右手で弦をミュートしながらカチャカチャ言う短いフレーズに、ドラマーのアランが合わせた。ライドとハイハットから入ってスネア、ベース、機械的で誰も聴いたことがない、まさにDEVOというサウンドだった。おれはそこにあの子どものときに親に反対されながら隠れて100万回聴いた『サティスファクション』の歌詞を乗せた。そのとき、その瞬間、なにかが繋がった。電気が走って身体中が痺れるような感じ。世界中のみんなが笑いながら、呆れながら、興奮する姿が見えた。そのままワンフレーズを延々と繰り返し、演奏を続けた。「おれはぜんぜん満足しちゃいない。おれはまったく満足できやしない。やって、やって、やって、やりまくったけど、おれはぜんっぜん満足できるわけない!」クリエイトする喜びというのはこんな風に突然来て、今まで過ごしてきたすべての時間がつながるそんな瞬間なんだとそのときに気づいた。そんな一瞬が確かにあった。

続けていくうちに曲と呼べるものも増えていって、通販カタログでみた作業用の黄色いツナギ(毎回破っても構わないくらい激安だった)をまとってライブを繰り返した。いろんなアイデアをステージの上に持ち込んだ。映画を上映したり、キャラクターを生み出したり、不思議な帽子を被ったり、衣装を脱ぎながら演奏したり…とか。思いつくままにパフォーマンスを続けた。そうすると自分たちでも思わぬところから評判を耳にするようになった。デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、ジョン・レノン、フランク・ザッパ、ジャック・ニコルソンたちがライブに来たとか来ないとか。真偽のほどは知らないが、そういうことを耳にするたびに、おれたちは何より欠けていた自信をまといはじめた。ああ間違っちゃいない!と思った。あるときデヴィッド・ボウイ(かの有名なジギー・スターダスト!)が、DEVOのアルバム制作に名乗りをあげた。なんてこった!でもその時期の彼は大忙しで、代わりにブライアン・イーノというイギリス人を紹介してくれた。彼とのレコーディングは、西ドイツのケルンで行われ…正直スムーズに進むようなものではなかった。今までやってきたように演奏したいおれたちと、そこから離れようとするイーノ。西ドイツの風は冷たかった。そして、『サティスファクション』をレコーディングした後、おれたちにはやらなきゃならないことがあった。あのローリングストーンズに、このネジが外れたカバーソングの許可を得る必要があった。おれたちはニューヨークに行って、あの口の動きを夢にまで見たミック・ジャガーにこの曲を聴かせた。曲が流れてもミックは無表情で沈黙し、グラスに赤ワインを注いでいた。味わったことがない空気と緊張感のなかで、みんなヤバいと思った。30秒経ったころ、ジャガーが立ち上がり、闊歩しながら「いいね、いいね」と宣言した。涙が出そうだったよ。あのテレビのなかのミック・ジャガーとガレージのなかの興奮といまの瞬間が完全に同時になって繋がったんだ。こんなこと人生のうちで何回あるだろうか。

DEVOは奇抜な格好をして、風変わりなことを歌っているから、カルトのように受け取られることも多い。だが、おれたちは日常で話すようにステージの上でもテレビの前でも演奏している。おれたちの信念はレコード会社から与えられたものでも、ファンが作ったものでもない。自分の経験や内側から出てきたものなんだ。めちゃくちゃ言われようともまずそこにいるのは自分たちで、面白い、かっこいいと思うことをひたすらやってきた。やってみて上手くいかないことも、やめることもあったけど、それでも誰の言いなりでもなく、まずは内側からの指示に従う。サルの時代から何億年もの進化(退化?)の歴史があって、そういうものに従うべきときもある。数字とか予測とか”上の人”とかそんな尺度より重要なことをすでにみんなが知っているのかもしれない。それがDEVOのアンダーグラウンドからの挑戦だった。

君は何者なんだ?何ができて、私たちに何をしてくれるんだ?どこの大学?どこの出身?趣味は?何時まで働ける?理不尽があっても黙っててくれる?

おれたちはそんなことを常に問われているような気がする。おれが正しくてあいつらは敵。今こっちの船に乗っておけばあなたは助かるなんて、そんな訳のわからない話をしている。太古の昔に身体をしなやかに動かして、自分の世話は自分でしていたはずの人間という生物は、頭のエナジードームから直接注入されるみたいに必要なものは何もかもすべて知らない場所から供給されて、毎日チャカチャカ働いて死んでいく生物になった。それが悪いとは言わない、そういうものの見方があるとは言いたい。もしかしたらおれたちはみんな人間様なんかじゃなくて、DEVO(退化生物)なのかもよって。

「Q:Are We Not Men? A:We Are Devo!」

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