カフカ断片集から無限に違法に引用。
正しい道筋を永遠に失ってしまった。
そのことを、人々はなんとも深く確信している。
そして、なんとも無関心でいる。
これまでの自分の罪、これからの自分の罪を、この骨の痛みでつぐなっているのではあるまいか。
そんなふうに思うことがある。
夜、あるいは夜勤明けの朝、機械工場から帰るときに。
こんな仕事に耐えられるほど、自分は強くない。
そんなことは前からわかっている。
それなのに、何も変えようとしないのだ。
この小屋にはなにもない、まったくなにもない。窓ガラスもなくなって窓枠だけになっているところから、森のざわめきが静かに流れこんでくるだけだ。
ここはなんてさびしいんだ。どうしておまえはここにいるんだ。
おまえはこの小屋の隅で眠るんだね。どうして森のなかで、新鮮な空気のなかで眠らないんだ?
ここを動きたくないんだね。小屋のなかのほうが安全だと思っていて。
蝶番がこわれて、ドアはとっくになくなってしまっているというのに。
それでもおまえは、宙に手をのばしてドアを閉めるようなしぐさをし、それから横になる。
夏だった。
ぼくらは草の上に横たわっていた。
ぼくらは疲れていた。
夜に、夜になった。
このまま寝かせておいてほしい。
ずっとこのまま……
彼は計算に没頭していた。
長い数字の列。
ときおり彼はその列から目をそむけ、顔を手にうずめた。
こんな計算をして何になる?
悲しい、悲しい計算……
A あなたがやろうとしていることは、だれの目から見たって、ひどく難しいことですよ。そりゃ、もっと難しいことだってあります。モンブランに登るとかね。でも、あなたがやろうとしていることだって、たいへんな力が必要ですよ。ご自分にそんな力があると思われますか?
B いいえ。あるとはとても言えません。わたしが自分の内に感じているのは、空虚さであって、力ではありません。
世間を生きてきて汚れのついてしまった目で見れば、わたしたちは長いトンネルのなかで列車事故に遭った乗客たちと同じような状況にある。トンネルの入口の光はもう見えない。出口の光もひどく小さく、たえず目をこらしていなければならないし、それでも見失ってしまうほどだ。そうなると、どちらが入口でどちらが出口なのか、それさえもはっきりしない。感覚の混乱のせいか、あるいは感覚が異様に鋭くなっためか、周囲にやたらと怪物ばかりが見える。トンネルのなかは、それぞれの人の気分や傷の深さによって、うっとりするほど魅力的だったり、うんざりするほど疲れさせられたり、万華鏡のような光景だ。
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