採血

採血のとき2本、3本と赤黒く満たされていくボトルを見ていると、この身体の中で起きている何かとんでもないことがそこに現れているように思う。どうせ大した病も見つからずただ捨てられるだけのその何百ccかの液体がこの身体を端から端まで巡ったという事実はこの医療機関の暗いすみっこの部分を端から端まで照らしても誰も思いつかないだろう。こうしてみんな何でもなくそして次第に身体は老いていって、まあしょうがないというふうに死んでいく。そのときお前はどう思うのかなんて思う間もなく、携帯を見張ったり、文庫本のページをパラパラめくったりしながら夜が過ぎていって、あっという間に亡くなった。そうしたらもう段取りが組まれて、焼かれて少し手を合わせて祈られてそれで硬い石の中に閉じ込められる。たったそれだけなのだ。土の彼方に分解されることも叶わず、悲しく閉じ込められる。寒いのに。10月はいくらか早すぎるように、急ぐように雨が降って、風が吹いて、霜が降りて、季節は変わっていく。この薄いバンテージを剥がすときに血の赤い塊が港区で生まれたのか中野区で生まれたのか、埼玉県なのか、飯島町で育ったものなのか、君はどこから来たのか。誰もわからない。お前はどこへも行けない。だからこそ不安を煽ってくるような悪魔には取り合わずとも歩を進めて行けるともいえるのだ。靴下を上まであげて歩こうか。靴が破れても気にならないように。

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